福岡検察審査会に提出した福岡地検機密漏洩事件に関する審査申立理由書です

(別紙)

 

1 守秘義務違反について

 

 まず、検察官から告発人に示された不起訴の理由は、「嫌疑不十分」の一言のみであった。社会的にこれだけ大きな問題となった事件についてこの程度の理由しか示されないのは、まさしく身内をかばい事実をうやむやにするものであり、捜査の不十分性を示すものである。

 しかも、告発人の問い合わせに対し、担当検察官は、不起訴の理由は、調べてみないとわからないなどと回答し、後日郵送で届けられた不起訴理由書には上記の一言しかないのである。

 このたった一言の不起訴理由も検察官の頭に残っていない程,真面目に捜査していなかったのである

  次に告発人はマスコミに対し発表された事実をもと不起訴の不当性を主張する。

 発表によると、検察官は、捜査目的などの理由がある場合には、秘密を漏らしても良いとする。

 しかし、守秘義務違反が問題となった、かの有名な外務省機密漏洩事件の判例では、守秘義務違反にいう「秘密」とは、「非公知の事実であって、実質的にもそれを秘密として保護に値するものを言い、その判定は司法判断に服するものである。」としているのである。秘密を漏らした目的によって、「秘密」が「秘密」でなくなるなどとはしていない。

 また、この外務省機密漏洩事件では、報道などの正当な目的での漏洩であっても、手段方法が相当なものとして社会的に是認されなければ、守秘義務違反になるとしている。

 本件で洩らされた情報は、まだ捜査機関が十分な証拠を得ていない、逮捕、家宅捜索などの強制捜査が行われる前の段階での捜査情報である。これは上の判例から考えても、秘密として保護に値するものであり、まさしく守秘義務違反上の「秘密」である。

 また、強制捜査着手前の秘密を漏らせば、証拠が隠滅されるおそれがあるのは常識である。だから、このような情報を漏らすことは通常では考えられないことである。相手が一般の人でなく判事だから特別扱いしたものであるのは疑いようがない。このように、情報を伝えるという捜査方法は社会通念上とても是認されるものではない。それだからこそ、これだけの社会的な大問題になっているのである。法律の専門家である山下元検事がこのような事情をわからないはずがない。山下元検事自身も、「高裁判事の妻と言う相手が相手だけに、誤認逮捕すれば、県警本部長の首が飛ぶ。地検幹部も、辞表を出さざるをえない」と県警側に伝えたことを新聞記者に対して認めているのである。情報は保身のために漏らされたのであり、捜査の協力のため、示談のために情報を伝えたというのは後からつけた理屈に過ぎない。

 しかるに、検察官は情報の告知には正当な理由があるとするものであり、これは、身内をかばい不起訴にするために理屈をこねるものであり、不当なものである。

 

2 職権濫用について

 

  この点についても、「嫌疑不十分」との理由しか示されず、捜査が不十分なのは、1と同じである。しかも、職権濫用の不起訴理由については、マスコミにも発表されていない。

 1でも述べたが、山下元検事自身も、「高裁判事の妻と言う相手が相手だけに、誤認逮捕すれば、県警本部長の首が飛ぶ。地検幹部も、辞表を出さざるをえない」と県警側に伝えたことを新聞記者に対して認めているのである。また、ストーカー事件の若い女性担当検事は、「やりましょう」と12月26日に年明けに逮捕する方針を県警と確認し、翌日被害者の女性から告訴状も出された。にもかかわらず、なぜかその日の地検内の協議で担当の検事が変えられ、慎重捜査の指示に方針が変わったと言うのである。

 このような事実関係のもとで、何らの圧力もなかったというのは不自然である。

 加えて、職権濫用についての当事者は警察・検察であり、十分に捜査できるはずなのに、何らの事実関係も明らかにされていないのである。

   このような事情のある社会的重大事件に対し、この程度の対応では、捜査を尽くしたものとは言えず、身内をかばい不起訴にするため真面目に捜査しなかったとしかいいようがない。

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