訴  状
 
 当事者
 
           〒133−      江戸川区
原告         河 村 昌 弘
 
           〒132−8501  江戸川区中央1−4−1
被告         江 戸 川 区
上記代表区長     多 田 正 見
 
訴訟物の価額 金5万円
貼用印紙額  金1千円
予納郵券   金6千円
 
 
   請求の趣旨
 
一 被告は原告に対し、金5万円を支払え。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
 
   請求の原因
 
一 原告の地位
  原告は平成7年4月1日付で被告に採用され、平成15年4月1日より、鹿骨健康サ ポートセンターに勤務している江戸川区の職員である。
 
二 原告に対する脅迫
 原告は平成15年5月13日に、平成14年度チャレンジスタッフの意見交換会に参加した。チャレンジスタッフとはいわゆる職員提案の一種であり、職員の応募した提案が場合によっては区の施策として採用されるという制度である。意見交換会とは採用されなかった提案について施策に関連する部署の部長が提案した職員と提案について意見を交わす場である。ここでは、原告がチャレンジスタッフに応募した「江戸川区におけるたばこ対策の推進」について、原告とO健康部部長代行(以下敬称を略し、「O」とする。)との間で江戸川区本庁舎において、意見交換がもたれた。
 その意見交換会において、原告は区のたばこ対策のあり方に疑問を呈し、改善を促した。当時東京地裁に継続中であった事件(江戸川区役所受動喫煙訴訟 平成11年(ワ)第13320号事件 平成16年7月12日東京地裁判決)において、江戸川区がJTから助力を受けて、タバコ産業サイドのたばこに害はないとする見解を主張していた。そのため、かようなタバコ産業とつながるような区の公共機関としてのあり方に疑問を呈したのである。しかし、それに対しOは原告に対し、「誣告罪で告訴する。」と主張し、原告は、それ以降、自由に意見を述べられなくなり、大変な精神的苦痛を受けた(甲第1号証参照)。
 そもそも、誣告罪が成立するのか大変疑問であるが、何らかの刑事告訴も辞さないと言う脅しであると考えられた。
 公務員は憲法を尊重し擁護する立場にあり(憲法第99条)、かつOはその部長という区役所の一般職の中では最上位の職責にある者である(江戸川区では部長の上は助役という特別職の公務員となる。)そのような者の言動とは到底思えず、原告は大変な精神的苦痛を被った。
 これを慰謝する慰謝料として国家賠償法1条1項に基づき、1万円を請求する。
 
三 名誉の毀損
 原告は、特別区人事委員会に継続している禁煙を求める措置要求(地方公務員法第46条)において、二のような事実があったことを触れることがあった。これに対し、江戸川区は事実と異なる主張をし、あたかも原告が「多田区長が日本たばこから何かをもらっているからだ」と主張したのが発端であるとして、事実をねじ曲げ、原告があたかもデタラメを言ったかのように主張し、原告の名誉を毀損した(甲第2号証参照)。実際は、原告はOの問いかけに対し、「そう思われても仕方ないじゃないですか。」と述べたたけである(甲第1号証)。
 これにより、原告は精神的苦痛を受けた。
 よって、慰謝料として国家賠償法1条1項に基づき、1万円を請求する。
 
四 喫煙室の性能の測定の拒否
 平成16年12月8日に原告は江戸川区の喫煙室が健康増進法に照らし十分な性能を有しているか否かを調べるため喫煙室の風速の測定を行おうと考えた。原告と江戸川区の間に禁煙を求める措置要求(地方公務員法第46条)が継続していることもあり、原告は公正を期すため、特別区人事委員会の職員の立ち会いの下で、測定を行えないかと考え、特別区人事委員会の職員に相談した。すると、人事委員会側はとりあえず、江戸川区の職員の立ち会いの下でやってみたらどうかと示唆し、江戸川区にその旨の話しをしてくれた。
 この件については、最終的に12月13日に江戸川区から測定についての立ち会いを拒否された。ただ、喫煙所の場所などに案内などは出来ると告げられた。そこで、測定のため、12月14日に江戸川区総務課管財係を訪問したところ、A総務課長から、分煙ガイドラインに基づく測定以外は認めないと言われた。話が違うと言うことで問答となったが、総務課長は公務でまもなく離席した。その後、管財係長から、総務課長からは、自分は河村さんを阻止しろとは言われていない、ただ、こうなっては案内はちょっとできない、旨の言を受けたので、その日、個人的に喫煙所の風速を測定した。なお、喫煙所はすべて一般来庁者が自由に入室できるものであり、風速計もハンディなものであり、測定時になんらの混乱も生じないし、また実際、生じなかった。職員以外の一般来庁者から原告に対して苦情を言われるようなことは一切なかった。
 同日、本庁舎以外の鹿骨事務所、小岩事務所で測定しようとすると、職員がやってきて、「総務部長から河村さんに測定をさせるなと言われている。」と告げた。小岩事務所などでは本庁に再度確認してもらったが、その趣旨は本庁のように職員が立ち会わないということだ、それ以上は指示は受けていないと言う旨、告げられた。
 このように、当初の話と違ったため、原告は喫煙所への職員の案内を受けられなかった。そのため、喫煙所の位置がわからず、測定できない喫煙所が生じてしまった。
 そこで、平成16年12月16日に未測定の喫煙所を測定しようと考えた。しかし、12月14日のように職員が、いちいち来ていろいろ言われては時間もかかり困るので、江戸川区の総務課管財係係長に連絡し、測定をするので、可能だったら職員に、河村が測定していても邪魔をしないように関係職員に伝えて欲しい旨相談した。原告は受動喫煙訴訟で全国ネットで放送されたり、新聞に載ったりしたので、多くの職員が顔を知っており、ただでさえ、すぐに何か言ってくる職員もいて困るという実情もあった。そのため、事前連絡も本来不要であると考えていたが一応、礼儀の意味も含め、連絡することにしたのである。すると、管財係長から分煙ガイドラインに従った専門家による測定以外は認めないと言われた。原告はこれに対し、地方自治法244条により、庁舎の使用は自由であるはずであり、おかしいと言った。問答の末、管財係長から住居不法侵入などでの告訴も検討することになりかねない旨言われた。そこで、最終的にA総務課長の判断を仰ぐこととなった。
 A総務課長はこの問題に関し、やはり、分煙ガイドラインに従った専門家による測定以外は認めないと答えた。ただ、原告が、それでは不許可と言うことかと確認すると、そうではないと答えた。では許可すると言うことかと問うと、また、そうではないと答えた。原告が条件を付すと言うことかと問うても、そうではないと答えられた。困った原告が、いずれかはっきりして欲しいと言っても、どちらでもない旨返答を受けた。この点は何度話しても同じであった。かつA課長は、原告が区の職員であり江戸川区とたばこ問題で係争中であることも考慮しなくてはならない旨述べた。
 原告は地方自治法244条から考えて、庁舎の測定は自由であると考える。しかし、行政行為には公定力があるため、かような返答では測定をすることを断念せざるをえない。測定をすれば、A総務課長の返答では、許可していないと言うことで、何らかの法的処分がなされかねないからである。
 江戸川区の返答が不許可なのか、不作為なのかいわゆる講学上の下命なのか禁止なのか理解に苦しむのであるが、いずれにしろ、12月16日の時点で、原告の測定する自由が地方自治法244条1項にも関わらず侵害されたのは疑いがない。また、原告と区の関係を理由とするならば244条3項違反である。原告は測定のために高価な風速測定器を借りてきていたのであり、にもかかわらず江戸川区の行為によって測定ができずに精神的苦痛を受けた。
 これに対する慰謝料として3万円を国家賠償法1条1項に基づき請求する。
 
五 最後に
 請求原因一については原告は慰謝料請求を当初考えていなかったし、請求原因二にあるように江戸川区が事実と異なることを言ってくることも想定していなかった。ちょっと言い過ぎたというような旨の釈明がありうるかと考えていたし、あるいは単に不知と主張すると考えていた。しかし、あたかも原告がデタラメを言っているかのような反論をしてきて正直驚いた。全国的に報道された受動喫煙訴訟の判決の後でも、タバコ問題に反省するでもなく、原告に測定をさせまいとするなどの江戸川区の原告に対する対応を勘案して司法判断を仰ぐこととした。
 江戸川区の喫煙所は健康増進法25条に違反していると原告は考え、それを実証し、区として命と健康のための正しいたばこ対策をしてもらうよう働きかけようとと考えていた。実際、喫煙所を長野県のようになくすべきであるということを、原告は権限を有する総務部長にも言っているし、医学論文と共に文書で正式に申し入れてもいる。ただ、これに対しては残念な返答しか得られていない。たばこ対策は本体、江戸川区の側が率先して行わなくてはならないことである。ゆえに、原告がわざわざ自らの費用をかけて個人的に測定などをするというならば、健康増進法などからして、進んで協力しなくてはならないはずである。
 特に原告の測定は原告の休暇を使って、原告の費用で測定器を借りて行うものである。しかも、誰もが入れる公共の場所で、短時間かつハンディーな測定器で、場所もほとんと占拠せず、江戸川区の公務に何の妨げにならないものである。
 なお、この喫煙所は江戸川区側が受動喫煙訴訟の後、今はたばこ対策をしているとマスコミに発表した時に引用した喫煙所である(甲第3号証)。きちんとしているのならば、測定をさせることになんら問題は本来ないはずであると考えるのであるが、上述の対応をする理由が理解できない。
 なお、原告は念のため、12月17日に江戸川区に請求原因三について明確にするように文書で求めたが、回答期限までに、返答がなかったため本訴に及んだものである。
 
 
 
   平成16年12月22日
 
                  原告        河村 昌弘
 
東京簡易裁判所 御中
 
                  送達場所の届出(住所)
                  電話およびファクシミリの届出
 
 
    付属書類
  証拠説明書                          1通
  甲第1号証乃至3号証                     1通
  
   
 
 
訴訟進行に関する意見の申立て
 原告の公務の関係上、期日は4時以降など午後の遅い時間を指定頂けるとありがたいので、その旨上申致します。
 
 
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