平成十七年 第四回定例会 江戸川区議会会議録 第十五号
第四回定例会 第三日

一、開会日時 平成十七年十二月一日(木曜日)午後・一時

二、出席議員(四十五名)


多田正見江戸川区長(壇上)

◆二十九番(倉内眞 君) 通告順に従い三点について質問いたします。
 はじめに、歩きタバコ・ポイ捨てを規制する条例の制定についてお伺いいたします。
 歩きタバコポイ捨てに起因する問題として、@健康上の問題、A安全性の問題、B治安上の問題等が言われております。
 歩きタバコは喫煙者本人の健康だけでなく、周りの多くの人、環境にも悪影響を与えております。だからこそ多くの自治体で条例が制定されています。
 このことについては我が区では環境をよくする運動により、区民と協働してマナー、モラルの向上を図っているところです。
 又、区では新しい試みとして、今年の夏、都内六十二区市町村合同のキャンペーンを行ったり、西葛西駅で街頭キャンペーンを、又各種イベントでの啓発活動、ステッカーやポスターさらにはバス車内での放送等取り組んでおります。
 しかし、その成果ははかばかしいものではありません。区民からの苦情も増えていると聞いております。中には他の二十二区では条例が制定されているのになぜ江戸川区ではないのかという声も聞かれます。
 二〇〇二年六月には歩きタバコを規制する『軽犯罪法の一部を改正する法律案』が衆議院に提出されましたが廃案となり、二〇〇四年十一月にも再提出されましたが、これも衆議院解散総選挙のために審議未了、廃案になりました。
 この趣旨は歩きタバコを全て規制するのではなく、熱による危険を及ぼさせるモノを規制するもので、公共の場所で危ないタバコの吸い方を、つまり人混みで歩きタバコをするなと言うことです。小さい子どもを持つお母さんは、その多くが歩きタバコによる子どものやけどを心配しております。雑踏の中ではタバコの火は何と摂氏七百度前後にもなり、とても危険であります。
 千葉県船橋市では、八年前に母親と一緒に歩いていた三歳の女の子の瞼に歩きタバコの火が襲い、少女は重傷。加害者はその場から立ち去ってしまったと言う事例がありました、その事により駅には歩きタバコ禁止の看板が作られました、「危ない! 歩きタバコが子どもの目に! タバコは必ず喫煙所をご利用下さい」この様に事故が起きてからでは遅いと思います。
 そこで、本区にあっても今まで述べたとおり、歩行喫煙禁止・タバコのポイ捨て禁止の条例を制定して、本区を「我がまちをきれいに」また「まちがきれいであれば犯罪の減少」そして「地域の衰退防止につながる」等、安全、安心な地域づくりを目指すべきと考えますが、区長のお考えをお聞かせください。(以下略)

○議長(渡部正明 君) 多田区長。
     〔区長 多田正見君登壇〕

◎区長(多田正見 君) お答えをしてまいります。
 歩きたばこ防止条例でありますが、今多くの区が条例を制定するに至っておりますが、我が区はまだ制定をしておりません。その理由は、つまりこのような条例のいわゆる効果と申しましょうか、そういうことに対して確証が持てないと、こういうことでございます。いろいろな区の事情がありまして、千代田区が一番最初にこの条例をつくりましたときに、私も直接千代田区長にその考え方を聞きましたけれども、かつてお話をしたかもしれませんが、四万人の人口のところに昼間八十万人以上の人たちがやってきてたばこを捨てていくと。我々千代田区民としては、これは我慢がならないことなのだと。したがって、お金をかけても罰則を設けて取り締まると、こういう考え方だと。そのことによって区外から来る八十万人の人たちに対して千代田区民の気持ちを直接ぶつけるのだと、こういう趣旨だというお話でございました。私の記憶でありますが、多分当時罰金徴収のために年間一億円を使ったと思います。罰金額は多分一千万円ぐらいではなかったと思いますが、そういうお金をかけてもこれは外に向かって千代田区の意思を表示したいと、こういう強い気持ちのあらわれである条例であったと、私はこれは評価をいたしますし、またそのことによっていろいろ歩きたばこに対する関心が高まったということもあったかと思います。
 今、このように罰則規定を設けて適用しておりますのは、千代田区と品川区の二区でありますが、その他は全くスローガンに終わっているわけでありまして、やめましょうという程度の防止条例ということになっているわけであります。これがどの程度歩きたばこ防止に役立っているかどうかということは、私としては余り期待するものがないのではないかというふうに、他区のことを云々しませんが、そういうふうに思われます。つまり軽犯罪までは行かない、マナーの問題を条例でどのように規制し得るかということには大いに限界があるわけでありまして、マナーを条例で決めなければならない、しかもそれがスローガン的なものに終わってしまうということではこの条例を制定する意味がないのではないかと、私は率直に申し上げてそう思います。取り締まりをやればいいじゃないかということになるかもわかりませんが、しかしながら、もし私どもがやればこのために相当額のお金をかけなければできないことになるだろうというふうに思います。マナーの問題にそんなに貴重な多額の税金を使うことが許されるかどうかという問題もございます。
 そういうわけで、マナーの問題に入りますと、歩きたばこだけではありません。自転車の問題もあります。犬ふんもあります。空き缶やその他のごみのポイ捨てもあります。そういうことはどうするんだという問題も出てまいります。そうこう考えますと、私どもは三十六年間にわたりまして続けてきた環境をよくする運動という、この貴重な活動が今なお力強く存在をする、こういうことでありますから、そういった運動を展開する中で、あくまで地域の皆さんの協力によってこういうことをなくしていくと、そういう方向で努力をすることの方がはるかに効果が上がるのではないか、そういうふうに考えているわけであります。




◆五番(田中健 君) 私は通告に従い質問します。質問に先立ち、ここ数日の出来事として気がついたことをご報告します。駅前から駐輪自転車が一掃されました。前回の質問で、私が「駅前に自転車を止めること自体が良くない」との見解を示し、区がしっかりと駅前駐輪の一掃を行った成果と思われます。特に篠崎駅前と葛西臨海公園駅前に関しては、見違えるほど綺麗になりました。この点を高く評価致します。そこでここ数週間により、駅前駐輪が一掃された経過について、ご説明下さい。
 駅前広場の美化に関して、自転車ではしっかりした実績を作れたのです。次こそはタバコ対策でしょう。東京二十三区の中で、歩行喫煙およびポイ捨てを条例で規制していないのは、本区だけという不名誉な現状があります。まずはこれを変えましょう。これからのタバコ対策における中長期的な見通しについてお聞かせ下さい。
 さて、今回は以前の区長答弁を検証してみます。
 まず今年の第一回定例会二月二十五日に行われた一般質問において、私は「健康増進法ができたことだし、タワーホール船堀の室内を禁煙にしたらどうか」との質問をしました。
 それに対して区長は、賀詞交換会のような区が主催する集会については二〇〇六年から禁煙にするとの約束をされました。
 しかし、民間が主催者となって利用する場合は、「利用団体が会合の中で喫煙をどうするかについては、利用者の方々にお任せしたいと思います」と区長は答弁されました。
 つまり「民間主催の集会では、施設内での喫煙に関して、江戸川区は一切関知しない」とのことです。正直「これはおかしな答弁だ」と思いましたが、当時の私は、これ以上の質問を控えました。
 ただ「おかしい」との思いは心に残ったままでした。私の疑問とは、健康増進法第二十五条の「施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」という条文にある「施設を管理する者」とは誰かということです。
 そこで私は、厚生労働省健康局生活習慣病対策室に連絡をし、健康増進法にかかわる多田区長の答弁について、その法的解釈が妥当なのかどうかを確かめました。すると厚生労働省の担当者は、区長の解釈は間違っていると答え、条文にある「施設を管理する者」とは、タワーホール船堀の場合、区長および館長を指すと説明されました。
 この解釈からも明らかなように、区の施設管理者である区長および館長は、その施設内において「受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない」訳ですが、区長答弁では、その責任を放棄しています。この見解は法律違反と言えませんか。区長答弁か厚生労働省の見解か、どちらかが間違っていることは明らかです。健康増進法第二十五条における「施設を管理する者」とは誰のことなのか、もう一度明確に答弁してください。
 ここで改めて申し上げますが、この第二十五条の目的は、「非喫煙者をタバコの煙から守ること」にあります。タバコの煙は、吸う本人のみならず、近くいる他人の健康にも深刻な影響を与えます。他人のタバコの煙を吸うことを「受動喫煙」といいますが、受動喫煙は他の環境汚染物質と比べても大きなリスクです。
 例えば、タバコの煙にはダイオキシンやヒ素も含まれており、タバコの煙に含まれるダイオキシンの濃度は工場の煙の十〜二百倍と報告されています。また、排ガスと比較してみましても、タバコ一本の燃焼によって、乗用車が十q走行する粒子状物質が発生します。日本では受動喫煙により、年間二万人から三万人の人が死んでいます。そのため、公共の場での喫煙行為は、もはや個人の趣味・嗜好ではなく公衆衛生の面から考えるべきものという認識に、世の中は変わってきているのです。
 アスベスト以上の被害をもたらしているタバコの煙ですが、他の公害と一つだけ異なる点があります。それは「タバコの煙はコントロールできる発生源」であるいうことです。受動喫煙被害は、きちんとした規制・対策によって皆無にできるものなのです。だからこそ健康増進法第二十五条に、この件が盛り込まれたのです。受動喫煙防止対策は、待ったなしで取り組むべき重要な課題です。
 この点を踏まえた上で、健康増進法に則った区の行政運営をお考えいただき、あわせて御答弁お願いします。
 今日は十二月一日です。これから本格的な忘年会・新年会のシーズンを迎えます。その時、区民施設の運営について、分煙施設がない一般の室内での喫煙を「施設を管理する者」が認めているのか、注意しているのか、私はしっかりチェックをします。問題があれば、再びこの場で、区長の責任を問うことになるでしょう。そのようなことがないよう、しっかりとした区長答弁をお願いします。
 以上で第一質問を終わります。(拍手)

○副議長(春山仲次 君) 多田区長。
     〔区長 多田正見君登壇〕

◎区長(多田正見 君) 自転車対策につきましてお答えをいたしますと、先ほども自転車対策お答えをいたしましたが、なぜ急によくなったかという、御評価をいただいたわけでありますが、田中議員に御指摘を受けてやったからということではありません。これは、長年にわたる懸案解決のためにあらゆる知恵を絞りまして、総合的な対策を講じる。つまり自転車は市民の便利な足である、無公害の足である。したがって、それを受け入れる容量をつくる。そして区が責任ある管理をする。そういう体制をしっかりやることによって応益原則を取り込む。そしてまたあわせてこれを機に地域の皆さんに御協力をいただくと。そういうことの成果だというふうに思っております。
 それからたばこの問題でありますが、二十三区中二十二区が何がしかの条例をつくっておりますが、一区だけつくっていないことは不名誉だと言われましたけれども、なぜ不名誉か私は理解に苦しみます。一区だけないことが名誉だというふうに思っていただいていいかと思っております。それは先ほどお答えをしたことで御賢察をいただければというふうに思います。
 それから厚生労働省の見解は、田中議員と厚生労働省の担当官との間でどういう会話があったか私は聞いておりませんので、論評することができません。論評することができませんが、施設の管理者はだれかと問われたら、それは区長ということになります。だれが運営をしていてもそれは区長の責任と、こういうことになることは間違いがありませんので、そういう意味で厚生労働省の担当者が言ったとすれば、それは正しいというふうに思いますし、私どももそう思っております。
 受動喫煙を防止する手だてを講じなければいけないということは私たちの義務でありますから、それは施設の管理者として整備をするということに努めてまいりました。一挙にできない部分もありましたけれども、これは順次整備をしているわけであります。しかもなるべく完全なものとして今行いつつあるところでございます。区の主催する会合で喫煙を結構ですと言ったことは、反省しますと言ったことは、それは施設管理者の第一義的な考え方として、皆さんに協力を、公の立場での会合ですから、まずそのように申し上げることは当然のこととして、私たちがそのことをしなかったことについて反省をすると、こういうことを申し上げたわけでありまして、今、つまりこのたばこの問題についての理解とか、あるいは受動喫煙の設備の問題とか、いろいろ過渡期のところにある問題でありますから、これから将来に向かって一律に、今の時点ですべてをどう律していきましょうということはなかなか言いにくい部分があると、こういう現実も存在するわけであります。
 したがって、例えば場所によって皆さんの合意があればそこでやってくださいというケースもありましたけれども、これが未来永劫そういうふうに私どもが考えているわけではありませんで、いろいろ施設を整え、そしてそういったことに対する理解を深める中で、施設管理者としてもこういうことがあるべき姿だと思いますので御協力をお願いしますということは、これはそういう時代が間もなく来ると思います。ですから、その点を御理解いただかないと、一つひとつの時点の中での現象をとらえて矛盾があるではないか、どうのこうと言われますとそういうふうに見えますが、流れの中では現に愛煙家もたくさんおられることでありますから、そういう方たちとうまく調整といいますか、矯正と──矯正と言うとオーバーですけれども、うまく持っていくということが私たちのやり方として適しているのである、そういうことに努めなければならないと思っているわけでありますので、方向として議員のおっしゃることを否定するつもりはございませんが、そういう方向に向かって努力をすると、そういうことかと思っております。

○副議長(春山仲次 君) 田中 健君。

◆五番(田中健 君) 御丁寧な答弁ありがとうございました。
 いつにも増して、私の質問はさらりと流されることが多いんですが、本日は特に丁寧にお答えいただき、非常にわかりやすかったんじゃないかと、そのように思っている次第であります。条例をつくらないということが名誉だというような御発言がありましたが、もし仮に私は、江戸川区が条例をつくらなくて済むというのであるならば、それはもう既に江戸川区内の駅前またはいろいろなところで喫煙、受動喫煙で苦しむ人がないというぐらいたばこが吸われていない状況だというのであるならば条例をつくる必要がないということも言えるでしょうけれども、現実は逆です。多くの人がたばこを吸い、そして駅前等でポイ捨てをし、それによって苦しんでおられる方からいろいろなお声を聞いています。それは区もホームページや区長の手紙等で、さまざまな形で区民の声として聞いていると思います。
 それがなぜ区長に届かないのか、またえてして行政というのは横並びが好きだというふうに私は認識をしておりますが、殊この問題においては、区長のただならぬ信念というか、要するに江戸川区だけがしなくていいというような、政治家としての信念に似たようなものを感じるわけですが、なぜそこまでかたくななんだろうかと。もっとほかの自治体に倣って、私は同様の対策、それはたとえ実態として、先ほど区長がお話しになったように、罰則規定は八区のうち実質的には二区しかやっていないというような言い方がありましたが、たとえそれでも、ほかの人の目から見れば、江戸川区は条例さえもつくっていない、そんな区じゃないか。たばこの問題について非常に後ろ向きな区なんじゃないだろうか、このように思われても仕方がないのではないか、このように私は思う次第であります。
 先ほど同僚議員から私の質問と同じような質問が出たときに、区長は千代田区の例を引きまして、一億ほどの予算をかけて罰金等で一千万ぐらいしか収入がなかったというようなお話をしましたが、そもそもこのようなお金の収支によってこの問題をやるやらないというふうに考えること自体がナンセンスですし、御存じのとおりたばこに関する収入に関しては、何十億というたばこの税金が上がっているわけですから、その中から対応すべきだと私は考えますが、いま一度区長からの見解を求めます。よろしくお願いいたします。

○副議長(春山仲次 君) 多田区長。

◎区長(多田正見 君) 条例を設けるということは、条例を設けた成果というものに対する大きな期待がなければなりませんし、またその実証が欲しいところでありますが、そのことについて期待が持てないと、こういう一つの認識がございます。あわせて江戸川区が何もないということではない、三十六年間もやってきた環境をよくする運動という取り組みがある。そういう中で地域の方々はこの問題について真剣に取り組んできてくださっているという、そういう実態があると。その方がよほどこのたばこのポイ捨てに対する成果として期待することができると、そういうものが存在するから、何も存在しなければほかの手を考えなければいけませんが、そういう貴重な、皆さんが汗を流して、一生懸命お互いの地域のためにやりましょうと、そういう気持ちがあって、そういう気持ちの上に立った運動があるんです、現実にあるんです。だから、そのことに力を入れていきましょうということの方がいいでしょうと、こういうことであります。
     〔「成果が上がっていないんです」と呼ぶ者あり




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