平成13年11月1日

衆議院議長 殿

 

陪審制の採用に関する請願

 

司法改革の審議会では、参審制採用の方向で、話がまとまったようですが、これは単なる諮問機関の判断でありまして、国会の決定ではありません。

一国の司法のありかたは日本の行く末を左右する大事なことでありまして,国会での慎重な審議を所望する次第であります。

司法は法曹のために存在しているのではありません。国民のために存在しているのです。ところが、法曹間の馴れ合いにより,司法がゆがめられていると言う現実もあります。このような現実が実際に存在することを昨今の福岡地検、福岡高裁の事件は知らしめてくれました。

司法は法曹界の人間関係で結論が左右されてはなりません。しかし,法曹も日本人であり、義理人情が彼らの間で生じうることは否定できないと思います。

 立派な法律家であっても、外部から活が入らない限り堕落しうるのです。

とするならば、裁判所の審議に一般の国民が参加するのは重要です。

この点,審議会では参審制の導入を決定しました。

 しかし、参審制では,圧倒的法的知識,権威を持つ裁判官の意見に国民はどうしても左右されてしまうでしょう。

この影響力が福岡の事件のように悪い方向に行使される危惧は否定できません。

陪審の審議は信用できないとする声もありますが、裁判官の合格した司法試験は小難しい法律の解釈の試験であって,事実がどうであったかを認定する能力の試験ではありません。事実の認定に関しては裁判官と一般国民になんら違いはないのです。

また、当事者が陪審あるいは裁判官の裁判を選択できるようにするという選択肢もありえます。

法曹界の人間関係に左右されない中立な陪審制の採用を所望いたし,請願致します。

 

請願事項

司法改革において陪審制を採用すること

 

河村昌弘


 

 

平成13年11月1日

衆議院議長 殿

 

弁護士費用敗訴者負担に反対する請願

 

司法改革の審議会では、弁護士費用の敗訴者負担を決定した模様ですが、一見よさそうに思えるこの決定にも大きな疑義があります。

すなわち、これでは、国民が司法を利用して,自らの権利を守るのを躊躇させてしまうと言う危険も大いにあるからです。

一国の司法のありかたは日本の行く末を左右する大事なことでありまして,国会での慎重な審議を所望する次第であります。

添付の資料にありますように、この制度には弁護士からも疑義が寄せれらています。以下引用します。

「この制度は勝訴の場合は都合が良い。しかし、良く考えて欲しい。敗訴すれば逆に相手方の弁護士費用も支払わなければならないのである。

借用書をもとに貸し金を請求する場合はともかく、離婚や借家の明渡し,建築紛争など身近な紛争のどれをとっても、裁判の勝敗は判決の言い渡しまでわからないのが通例である。地裁の判決が高裁で逆転することもある。消費者被害など社会的に新しい紛争ではなおさらである。だからこそ、判決報道に注目が集まるのである。

というのも、裁判で勝訴するには,主張を裏付ける証拠と法的根拠が必要である。しかも、日本は欧米よりも相手方や第三者の手元にある証拠を裁判に提出させる証拠開示制度が不十分であるが、欧米よりも高度の証明を求められる。法の整備も遅れている。

HIV(エイズウイルス)訴訟でも,厚生省は責任を争いつづける一方で,ロッカーの中にしまわれていた非加熱製剤に関する「郡司ファイル」などを「存在が確認できない」として提出しなかった。そんな状況で、相手方である国や製薬企業の弁護士費用の負担も余儀なくされるかも知れないとすれば、だれしも提訴に躊躇を感じるだろう。

このように,敗訴者の負担を増やすこの制度は,裁判そのもののリスクを大きくする。企業や国はそのリスクもコストに組み入れられても,大方の当事者は自ら負担するほかない。勇気をもって裁判に踏み切っても,敗訴時の負担を恐れて、不本意な和解に応じざるを得なくなることになりかねない。

また、HIV訴訟での勝利的和解は、スモン訴訟など薬害,公害事件の判決の積み重ねの上に築かれたものでもある。敗訴者負担制度は、このような判決がもつ個別事件の解決を超えた規範創造機能をも後退させることになる。

確かに,敗訴者負担制度をとる国もあるが,そこでは証拠開示制度や弁護士費用を保険でカバーする制度,法律扶助制度が格段に充実している。日本はすべての面でこれからである。

司法改革の目的は,司法を,国民がより利用しやすく、期待にこたえるものとすることにあるはずである。裁判所は一人ひとりの権利を守る最後の砦なのである。その裁判所を

国民から遠ざけ,司法改革に逆行するこの制度を容認することがあってはならない。」

よく考えてみて欲しいと思います。現在弁護士費用は不法行為においては損害の一部として請求することができます。相手方の濫訴の場合もそうです。

請求できないのは,貸し金の請求のような場合です。しかし,考えてみれば裁判をしなければ回収できないような相手に貸したのは,貸した側の失敗でもあり、貸し出しのリスクでしょう。しかも、たいていの場合、裁判で勝訴しても強制執行法の不備により、多額の執行費用をかけてもなお,元本すら回収できないのが通例です。

弁護士費用の相手方負担は、このような当事者間では,役に立たず、HIV訴訟のような個人の生命,身体の権利が問題となるような訴訟を締め出す結果にしかなりません。

以上より以下の事項を請願いたします。

 

請願事項

司法改革において弁護士費用敗訴者負担制度を導入しないこと。


 

河村昌弘

 

平成13年11月1日

衆議院議長 殿

 

現行司法試験の継続を求める請願

 

司法改革の審議会では、ロースクール採用の方向で、話がまとまったようですが、これは単なる諮問機関の判断でありまして、国会の決定ではありません。

一国の司法のありかたは日本の行く末を左右する大事なことでありまして,国会での慎重な審議を所望する次第であります。

審議会では,現行司法試験の弊害から、ロースクールを設立し、現行司法試験を廃止する決定がなされています。

確かに,現在の司法試験は難しく、合格するのに多大な労力を要し、弊害は大きいかもしれません。

しかし、この試験は,わが国においてすべての国民に開かれている平等な試験であることも忘れてはなりません。

「だからあなたも生きぬいて」の著者の弁護士さんのような方も、このような学歴に関係なく受験できる試験だからこそ誕生したといえます。

ロースクールでは、費用・時間に余裕のある者のみが受験し,入学できるということになってしまいます。

そもそも司法試験が難しいのは資格試験であるのに合格定員があること、そして、採点がかなり主観的と言われ正解が公表されていないことにあります。

まず、改革をするとしたら正解を公表することであり、ロースクールを設立し法学部の教職員の新たなポストを作り出すことではありません。

社会とかけ離れた非常識な法曹をなくすことが目標ならば、大学院としてのロースクールを設立し、法曹になるのにいたずらに机上の学問を学習させるのではなく、実社会の経験のある者でも法曹になれるような道筋をきちんと作るべきでしょう。

現行司法試験を廃止すると、社会にでた人の中から法曹になるのは難しくなりますし、様様な事情で進学できなかった人が法曹になる道を閉ざすことになります。

法と言うものを扱う職業を一部の人のみの特権とすべきではありません。

ロースクールを設立しても、現行司法試験制度を残すということも可能なはずです。

以上より次のごとく請願いたします。

 

請願事項

司法改革において現行のような司法試験を存続すること。

 

 


河村昌弘

 

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